2025年の総括 WBSCが社会的責任(CSR)を強化
2022~2028年のWBSC戦略計画で示されているようにガバナンスと評判の強化、透明性と持続可能性の向上は、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)にとって引き続き中心的な優先課題だ。
持続可能性とガバナンス
2025年、WBSCは初となるマテリアリティ評価を完了し、持続可能性と責任あるガバナンスに対する長期的な取り組みを一段と明確にした。この評価プロジェクトは、ドイツのDEKRA Assurance Services GmbHとの協力のもとで実施された。
本評価を通じて、組織およびステークホルダーの双方にとって特に重要な環境・社会・ガバナンス(ESG)課題が特定された。主な分野には、倫理的な経営、コンプライアンスと透明性、選手・スタッフ・観客の健康と安全、公正な労働環境、ダイバーシティとインクルージョン、地域社会への関与、廃棄物管理、人権などが含まれる。さらに、CO₂排出量、再生可能エネルギーの活用、持続可能なパートナーシップ、責任ある調達といった、財務面においても重要な優先課題が示された。
本WBSCマテリアリティ評価報告書は、加盟国内連盟、国際オリンピック委員会(IOC)、スポンサー、ファンをはじめとする利害関係者に対し、透明性と説明責任を高める役割を果たす。また、リスク管理や長期的な持続可能性に向けた計画の基盤となるとともに、ESG原則をガバナンスに組み込む取り組みを通じて、WBSCを国際スポーツ連盟の中でも先進的な存在として位置づけている。
あわせてWBSCは、2030年までの国際的な指針である国連の持続可能な開発目標(SDGs)との整合を、今後も継続して図っていく。
セーフガーディング
セーフガーディングは、WBSCの組織としての社会的責任(CSR)フレームワークにおける中核的な柱であり続けている。2025年には、国際サーフガードネットワーク(International Safeguards Network)への加盟を通じて、スポーツにおける子どもや脆弱な参加者の保護に向けた取り組みを、さらに強化した。
WBSCのセーフガーディングポリシーは、二つの柱に基づいている。第一は「予防」であり、子どもに対するリスクを最小限に抑えるための対策を講じること。第二は「対応」で、子どもが危険にさらされている、あるいは被害や虐待が疑われる場合に、明確かつ適切な行動を取ることである。
2025年シーズンを通じて、WBSCはインテグリティ・ユニットが主導する「#SafeCall」キャンペーンを展開し、安全確保に対する意識向上を図った。このキャンペーンの一環として、WBSCのすべてのイベントにおいて30秒の動画が上映され、特にジュニアカテゴリーに焦点を当てながら、選手、コーチ、審判に対して、選手の権利と最善の利益の尊重を呼びかけた。
動画は英語、スペイン語、日本語、中国語の4言語で提供され、WBSC選手委員会が主導して制作された。また、2021年以降すべてのWBSCイベントに配置されている安全確保担当官の活動を補完する役割も果たしている。これらの担当者は、選手に対して機密性の高い支援を提供するとともに、寄せられた懸念がプライバシーに十分配慮した形で慎重に対応されるよう努めている。
ダイバーシティとインクルーシビティ
WBSCは、すべての競技においてジェンダー平等、多様性、インクルージョンの推進を引き続き重視している。野球およびソフトボールの男女大会を主管するだけでなく、包摂性と平等の促進を目的として男女混合で行う新たな競技「ベースボール5」を立ち上げた。ベースボール5は、ダカール2026ユースオリンピックにおいてオリンピックデビューを果たす予定だ。
これらの重点分野をさらに前進させるため、WBSCは二つの専任組織を設置した。一つは、オリンピックバレーボール金メダリストであるユミルカ・ルイス氏(キューバ)が議長を務める「多様性・包摂性委員会」、もう一つは、山田博子氏(日本)が委員長を務める「女子野球開発委員会」である。
2025年4月には、ユネスコの後援のもと2021年に設立され、スイス連邦の支援を受ける「ジェンダー平等とスポーツに関するグローバル観測所(Global Observatory for Gender Equality & Sport:GO)」に加盟した。GOは、体育・身体活動・スポーツを通じた女性および女児のエンパワーメントとジェンダー平等に関する研究、対話、専門知見を促進する国際的なハブとして機能している。
WBSCは、GOの諮問評議会メンバーとして、スポーツにおけるジェンダー平等に関する国際的な取り組みの形成に積極的に関与し、多様な利害関係者の視点が反映されるよう取り組んでいる。2025年には、GOの年次会議に加え、6月10日および9月29日に開催された諮問評議会会議にも参加した。
女性のリーダーシップ
WBSCは、スポーツのガバナンス、指導、運営の各分野において、ジェンダーバランスの確保と女性のリーダーシップ推進を重要な方針として掲げている。
この取り組みの一環として、WBSCは夏季オリンピック国際競技連盟協会(ASOIF)が実施する「Women Lead Sports Programme」に加盟した。
同プログラムには、WBSCパラリンピック委員会メンバーのエヴァ・トレビザン氏と、国際ブラインド野球協会のプリシラ・ブランディ氏がWBSC代表として参加したほか、リトアニア野球・ソフトボール連盟の事務総長ノメダ・ネヴェラウスカイテ氏、元オーストラリア女子野球選手で現在は管理職を務めるナレル・ゴストレイ氏も参加した。
また、WBSC野球技術委員のシャリ・ライニガー氏(カナダ)と、WBSCヨーロッパ執行委員会メンバーのメッテ・ニッセン・ヤコブセン氏(デンマーク)は、2025年10月24日から11月14日国際ワールドゲームズ協会(IWGA)の主催で実施された「Women Lead Sports Master Programme」を修了した。
さらにWBSCは、女性のハイパフォーマンススポーツ分野におけるリーダーシップおよび指導機会の拡充を目的とした、国際オリンピック委員会(IOC)支援のプログラム「Women in Sport High Performance Pathway Programme(WISH)」への参加に向け、3名のコーチを指名した。
この21か月間にわたるプログラムでは、オリンピック・ソリダリティや複数の国際競技連盟の支援のもと、世界各国から選ばれた女性コーチが集い、専門的な研修を受ける。
南アフリカを女子野球アフリカ選手権優勝へ導いたヘイリー・スコット=マリー氏は、2025年5月にWISH第5期生として参加した。また、ソフトボールのオリンピアンであるグレタ・チェケッティ氏(イタリア)とサスキア・コステリンク氏(オランダ)は、2025年12月に第6期生として参加している。
加えて、WBSCスタッフのカリーヌ・エソウア氏は、ASOIF主催、Equal Careers提供による「女性リーダーシップワークショップ」に参加し、組織内におけるリーダーシップ能力の強化に寄与した。
スキルマップ
WBSCでは、コミッションの募集および任命プロセスの一環として、応募者に対し、該当するコミッションに関連するスキルマップの提出を求めている。このツールは、さまざまな経歴、文化、専門性を持つ人材を結集することで、多様性の促進を図ることを目的としている。
また、スキルマップは、各コミッションメンバーの任期終了時における活動評価の手段としても活用されており、十分な根拠に基づく意思決定を支援するとともに、WBSCのガバナンス体制が継続的に有効に機能することを支えている。
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